📖 この台本について
⏱ 読了時間:約3分(900字)
👤 登場人物:性別不問1名(1人用)
🎭 ジャンル:ホラー/怪談
🎙 用途:朗読配信・練習・ボイスサンプル
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作品について
洗面所の鏡。毎朝必ず向き合うその鏡が、ある日から「少しだけズレて」いる——そんな気づきから始まるホラー怪談です。血も叫び声もない。ただ、鏡の中の自分の動作が、わずかに遅れているように見える。その違和感だけが、静かに語り手を追い詰めていきます。
この作品の核心は、「自分自身が信用できなくなる恐怖」です。怪物や幽霊ではなく、毎日見ている自分の鏡像がずれていくという、日常に根ざした不安を描いています。「気のせいかもしれない」という余地を残したまま進む構成が、読後にじわじわと効いてきます。
朗読では、最初から最後まで穏やかな語り口を維持してください。パニックにならず、ただ淡々と観察を続ける人物として読むことで、かえって聞き手の不安感が増幅されます。
▶ 朗読のポイントを見る(朗読される方向け・クリックで展開)
① 語りのトーン
全編を通じて、観察日記を読み上げるような平静なトーンを保ってください。感情を乗せすぎず、むしろ事実を淡々と報告する声が、この作品の不気味さを際立てます。
② 緩急のつけ方
「一秒、遅れている」というフレーズの前後で、ごく短い間を置いてください。聞き手がその意味を飲み込む時間を作ることが重要です。繰り返しのたびに、わずかずつテンポを落とすと効果的です。
③ 感情表現のコツ
「私が先に動いた」という一文は、この作品のターニングポイントです。驚いて声を荒げるのではなく、信じられないものを目撃した人間がするような、ごく静かな確認の口調で読んでください。その静けさが恐怖を増幅します。
④ ラストの処理
最後の一文を読み終えたあと、すぐに声を止めず、息だけを残すように2〜3秒おいてから終わらせてください。余白が「続き」を想像させ、聞き手の中で物語が動き続けます。
── 台本本文 ──
おかしいと思い始めたのは、先週の朝だった。
洗面所で歯を磨いていたとき、なんとなく鏡を見た。自分の顔が映っていた。当たり前のことだ。でも——なんとなく、違う気がした。うまく言えないけれど、映り方が、いつもと少しだけ違うような。
その日は気にしないようにした。寝不足だったし、照明の加減かもしれないと思った。
翌朝、また見た。
今度ははっきりわかった。右手でコップを持ち上げた。鏡の中の私も、右手を上げた。でも——一秒、遅れている。ほんの少しだけ、動きがずれていた。
目をこすって、もう一度確認した。普通だった。完璧に同時に動いていた。やっぱり気のせいか、と思いながらも、その日一日、どこか落ち着かなかった。
三日後の朝。
鏡の前に立つのが少し怖くなっていた。それでも確認しなければという気持ちで、洗面所に入った。電気をつけた。鏡を見た。
私が右手を上げる前に、鏡の中の私が右手を上げた。
私が先に動いた——のではなかった。鏡が、先だった。
今朝は、洗面所に入れなかった。廊下から電気だけつけて、鏡には近づかなかった。
ただ、遠くからでも見えた。鏡の中に、誰かが立っているのが。
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