【無料・フリー台本】春の終わりに、君の名前を呼んだ|5分・1人用|切ない百合朗読を探す方へ|声の書庫

恋愛/青春

📖 この台本について
⏱ 読了時間:約5分(1500字)
👤 登場人物:女性1名(1人用)
🎭 ジャンル:恋愛/青春
🎙 用途:朗読配信・練習・ボイスサンプル
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作品について

卒業式が終わった体育館で、三年間ずっと隣にいた彼女への想いをようやく言葉にする瞬間を描いた百合朗読台本です。好きだという気持ちを飲み込み続けた日々と、桜が散る中で交わされる告白。これから別々の道を歩むふたりの間に生まれた、小さくも確かな始まりの物語です。

本作の特徴は、告白の言葉そのものよりも、「言えなかった時間」の描写に重きを置いている点です。屋上での何気ない会話、朝の「おはよ」の声、触れそうで触れない距離——積み重ねられた日常の一つひとつが、ラストの告白シーンを支えています。名前を初めて呼ばれる瞬間の静けさが、この作品の核心です。

朗読の際は、抑えた声のなかに切なさと期待を同居させるようなトーンがおすすめです。感情を爆発させる場面はなく、胸の内に溜まったものがそっとこぼれ落ちるような繊細な表現が求められます。

▶ 朗読のポイントを見る(朗読される方向け・クリックで展開)

① 語りのトーン

冒頭の「桜が散りきった四月の初め、わたしはまだ春の夢を見ていた」は、過去を振り返る柔らかく少し寂しい声で始めてください。全体を通して、友人に打ち明け話をするような親密な距離感を保ちつつ、自分自身の感情を確認するような内省的なトーンが理想です。

② 緩急のつけ方

日常の回想が続く前半はゆったりと読み進め、彼女から「ちょっと残ってて」と言われる場面で一度テンポを引き締めてください。告白の「あなたのことが好きだった。ずっと。友達として、じゃなくて」は、震えを含むようにゆっくりと、一文ずつ間を取って読むと感情が伝わります。

③ 感情表現のコツ

「……わたしも」という返事は、声に出せたのか出せなかったのか自分でもわからない、という描写の通り、囁きよりも小さく、息に近い声で読んでください。続く彼女の「聞こえた」は、涙声でありながら微笑んでいる声を意識すると、場面の温度が一気に上がります。

④ ラストの処理

「春が終わる。でも、何かが、始まった気がした」は、涙のあとに訪れる静かな希望を、息を整えてからゆっくりと読み上げてください。語尾を少しだけ上向きにすると、終わりではなく始まりの予感が残ります。読了後の沈黙は3秒ほどが適切です。

── 台本本文 ──

桜が散りきった四月の初め、わたしはまだ春の夢を見ていた。

卒業式から三日が経っていた。クラスメートたちはもう新しい生活を始めているのに、わたしだけがあの体育館の空気の中に取り残されているような気がしていた。制服を畳んで押し入れに仕舞った日、なぜか涙が出た。制服のせいじゃない。わかってた。

彼女のことを考えていたから。

三年間、ずっと隣にいた。朝のホームルームの前、いつもわたしの席に来て、「おはよ」って言う声が好きだった。眠そうで、でも少しだけ笑っていて。その声を聞くためだけに、早起きが苦じゃなくなった。おかしいよね。そんなこと、誰にも言えなかった。

「ねえ、高校卒業したら何したい?」

去年の秋、屋上で彼女がそう訊いた。お弁当を食べながら、空を見上げながら、なんでもないふうに。わたしは「うーん、まだわかんない」って答えた。本当は、あなたのそばにいたいって思ってた。でも言葉にしたら壊れそうで、飲み込んだ。

彼女は「わたしは、遠くに行きたい気もするし、ここにいたい気もする」って言って、少し笑った。その横顔が、夕暮れに染まっていて、綺麗で、苦しかった。

卒業式の当日、みんなが泣いて、笑って、写真を撮っていた。わたしと彼女も何枚か一緒に撮った。カメラを向けられるたびに彼女はわたしの腕を掴んで、ぐっと引き寄せた。それだけで胸が痛かった。好きだった。ずっと、好きだった。

式が終わって、みんなが帰り始めたころ、彼女がわたしに言った。

「ちょっと残ってて。最後に、二人で話したいことある」

心臓が跳ねた。何を話すんだろう。何を言われるんだろう。怖かった。でも、その「話したいことある」の意味を、違う方向に受け取らないようにした。期待しちゃいけないと、ずっと自分に言い聞かせてきたから。

人がいなくなった体育館の隅で、わたしたちは並んで立っていた。外から桜の花びらが風に乗って入ってきて、床に落ちた。

彼女はしばらく黙っていた。

「……ずっと言えなかったんだけど」

声が少し、震えていた。

「あなたのことが好きだった。ずっと。友達として、じゃなくて」

時間が止まったと思った。違う、時間は動いていた。外の風が、また花びらを運んできていた。ただ、わたしの頭の中だけが止まっていた。

「……わたしも」

声に出せたのか、出せなかったのか、自分でもわからなかった。でも彼女は、わたしの顔を見て、目を細めた。

「聞こえた」

そう言って、笑った。泣きそうな顔で、笑った。

わたしたちは、何も解決していない。これからどうなるかも、何も決まっていない。彼女は春から別々の場所に進む。わたしも。距離が開く。時間が変わる。簡単じゃない。

それでも。

「名前、呼んでいい?」って彼女が言った。苗字じゃなくて、名前で。三年間、一度も呼ばれたことのなかった名前で。

わたしは頷いた。

体育館に、わたしの名前が、静かに響いた。

あの日の春の終わりを、わたしはきっとずっと覚えている。桜の残り香と、震えた声と、初めて名前を呼ばれたあの瞬間を。——それだけで、もう十分だと思った。いや、本当はもっと欲しかった。でも今は、ただ、あの声に包まれていたかった。

春が終わる。でも、何かが、始まった気がした。

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