📖 この台本について
⏱ 読了時間:約3分(900字)
👤 登場人物:女性1名(1人用)
🎭 ジャンル:恋愛/青春
🎙 用途:朗読配信・練習・ボイスサンプル
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作品について
放課後の図書室を舞台に、隣の席の男子生徒が忘れていった文庫本と、そのページに挟まれた押し花のしおりをめぐる、ごく短い恋の予感を描いた作品です。しおりの裏に書かれた一行のメッセージが、主人公の心を小さく揺らし、返事を書くかどうか迷う数分間がそのまま物語になっています。
本作の特徴は、会話がほとんどなく、主人公の内面の揺れだけで物語が進む構成です。しおりに書かれた「三章のあの場面、君はどう思った?」という問いかけが、同じ本の同じ場面を好きだったという偶然と重なり、心臓がことりと音を立てる瞬間を丁寧に切り取っています。短い台本ながら、聞き手の想像が広がる余白のある作品です。
朗読の際は、図書室の静けさを壊さないような、小さく澄んだ声を意識してください。秒針の音や鳥の鳴き声が聞こえてくるような繊細なトーンで読むと、放課後の空気感が自然に伝わります。
▶ 朗読のポイントを見る(朗読される方向け・クリックで展開)
① 語りのトーン
冒頭の「放課後の図書室は、世界でいちばん静かな場所だと思う」は、ゆっくりと、図書室に座った瞬間の安堵を含んだ声で入ってください。全体を通して内緒話のような小さめの声量を保ち、主人公の胸の内をこっそり覗いているような距離感が理想です。
② 緩急のつけ方
しおりがページから落ちる「ひらりと一枚の紙片が落ちる」の瞬間は、直前に一拍の間を置いてテンポを変えてください。しおりの裏の文字を読み上げる「三章のあの場面、君はどう思った?」は、好奇心と戸惑いが混ざった速度で、少しだけゆっくりと読むと効果的です。
③ 感情表現のコツ
「心臓が、ことり、と音を立てた」は、この作品最大の転換点です。声を張らず、むしろ息を止めたあとにそっと漏らすように読んでください。返事のメモを書く場面「あの場面、私も好きです」は、鉛筆を握る手の緊張が伝わるような、少し震えた小さな声がよく合います。
④ ラストの処理
「明日が、いつもよりほんの少し、楽しみになった」は、頬が自然とゆるむような柔らかい声で読み、語尾をふわっと消してください。期待と照れが混じる余韻を、3秒ほどの沈黙で包み込むと、聞き手の胸にも甘酸っぱさが残ります。
── 台本本文 ──
放課後の図書室は、世界でいちばん静かな場所だと思う。
窓から差し込む西日が、机の木目をオレンジ色に染めていた。私はいつもの席に座って、借りたばかりの本を開く。隣の席には、誰もいない。でも、机の上に一冊の文庫本が置き忘れられていた。
見覚えのあるカバー。隣の席の彼が、いつも読んでいる本だ。
「……届けた方がいいよね」
私は手を伸ばして、そっとその本を引き寄せた。その瞬間、ページの間から、ひらりと一枚の紙片が落ちる。
しおりだった。押し花の、小さな、手作りのしおり。よく見ると、裏側に細い文字で何かが書いてある。
「えっと……『三章のあの場面、君はどう思った?』」
声に出して読んでから、私は首をかしげた。誰に向けた言葉なんだろう。ページをめくってみると、三章にだけ、鉛筆でうっすらと線が引かれている箇所があった。ちょうど、私が先週、同じ本を読んで一番好きだと思った場面。
心臓が、ことり、と音を立てた。
もしかして、これは。
ううん、きっと気のせい。偶然。そう思いながらも、私は鞄から小さなメモ用紙を取り出して、鉛筆を握った。
「あの場面、私も好きです。何度読んでも、泣きそうになる」
書き終えて、しおりと一緒に、そっと三章のページに挟む。本を元の位置に戻して、私は何食わぬ顔で自分の本に目を落とした。
でも、文字はちっとも頭に入ってこない。
窓の外で、鳥が一羽、夕空を横切っていく。図書室の時計の秒針が、やけに大きく聞こえた。
明日、彼はこのしおりを見つけるだろうか。メモに気づいて、どんな顔をするだろうか。
想像するだけで、頬が熱くなる。
西日が少しずつ濃くなって、机の上の本を、やわらかく照らしていた。その光の中で、押し花のしおりが、まるで内緒話みたいに、ちいさく微笑んでいる気がした。
――明日が、いつもよりほんの少し、楽しみになった。
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