📖 この台本について
⏱ 読了時間:約3分(900字)
👤 登場人物:女性1名(1人用)
🎭 ジャンル:ホラー/怪談
🎙 用途:朗読配信・練習・ボイスサンプル
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作品について
雨の日だけ現れる女の子と交わした「おやくそく」。幼い頃の記憶をたどる語り手が、やがてその約束の本当の意味に気づいていく物語です。日常の風景の中にじわりと滲む違和感を描いた、静かなホラー作品です。
本作の特徴は、恐怖を直接的に描かず、語り手の回想と気づきの過程だけで怖さを立ち上げている点にあります。派手な怪異は登場しませんが、最後まで読んだとき、冒頭の何気ない描写の意味が反転する構成になっています。読み返したくなる一作です。
朗読の際は、子どもの頃を懐かしむような穏やかなトーンから始め、終盤に向けて少しずつ声の温度を下げていくと効果的です。語り手自身がじわじわと恐怖に気づいていく過程を、声の変化だけで表現してみてください。
▶ 朗読のポイントを見る(朗読される方向け・クリックで展開)
① 語りのトーン
前半は、幼少期を振り返る穏やかな語りを意識してください。「小学校に上がる前のことだから、もう二十年も昔になる」のあたりは、懐かしさを含んだ柔らかい声で読むと、後半との落差が際立ちます。全体として淡々と語る中に、かすかな不穏さを忍ばせるイメージです。
② 緩急のつけ方
「あのね、あめのひに、ひとりであるいたら、だめなんだよ」のセリフは、幼い子どもの口調でゆっくり、一語一語区切るように読んでください。終盤の「あの子は──私を迎えに来ていたのだ」の前には、二拍ほどの長い間を取ると、気づきの重さが伝わります。
③ 感情表現のコツ
語り手は怖がって叫ぶようなタイプではありません。じわじわと背筋が冷えていく静かな恐怖を、声のトーンをわずかに低く・遅くすることで表現してみてください。感情を抑えるほど、聴き手の想像力が動きます。
④ ラストの処理
最後の一文は囁くように、息混じりの声で読み切ってください。読み終えたあと三秒ほど沈黙を置くと、余韻がそのまま怖さに変わります。
── 台本本文 ──
小学校に上がる前のことだから、もう二十年も昔になる。
あの頃、私の家は小さな団地の四階にあった。雨の日は外で遊べないから、共用廊下の端に座って、水たまりに広がる波紋をぼんやり数えるのが好きだった。
その子が現れたのは、六月の雨の日だった。赤い傘をさした、私と同い年くらいの女の子。見たことのない顔だった。でも子どもの世界では、それだけで友達になれる。
「あそぼ」
そう言って笑ったその子と、私はしりとりをしたり、手遊びをしたりして過ごした。楽しかった。けれど不思議なことに、その子は晴れの日には絶対に来なかった。雨の日だけ、決まってあの廊下の端にいた。
ある日、その子が真剣な顔で言った。
「あのね、あめのひに、ひとりであるいたら、だめなんだよ」
どうして、と聞いたら、その子は少し困ったように首をかしげて、こう続けた。
「つれていかれちゃうから。……だから、おやくそく。あめのひは、ぜったい、おうちにいてね」
私はうなずいた。指切りもした。それからしばらくして私は引っ越し、その子のことは記憶の底に沈んでいった。
先日、実家に帰ったとき、母にふとその話をした。母は一瞬だけ動きを止めて、それからぽつりと言った。
「あの団地、あなたが来る一年前に女の子が一人亡くなっているの。雨の日に、廊下から落ちて」
四階の、共用廊下。私がいつも座っていた、あの場所。
あの子は──私を迎えに来ていたのだ。雨の日に、ひとりでいる子どもを。
今日も雨が降っている。窓の向こうに広がる灰色の景色を見つめながら、私はあの約束を思い出している。あの子はまだ、雨の日の廊下に立っているのだろうか。赤い傘をさして、次の「ともだち」を待ちながら。
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