【無料・フリー台本】コーヒーシュガーの数|5分・1人用|切ない片想い朗読をしたい女性向け|声の書庫

感動・泣ける

📖 この台本について
⏱ 読了時間:約5分(約1,500字)
👤 登場人物:女性1名(1人用)
🎭 ジャンル:恋愛
🎙 用途:朗読配信・練習・ボイスサンプル
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作品について

大学時代から通い続けた喫茶店で、ひとりの女性が静かにコーヒーをかき混ぜている。隣の席にはもう、いつもの彼はいない。三年間、毎週土曜日の午後に交わしてきた何気ないやりとりと、ついに告げられなかった言葉。その記憶を、彼女はコーヒーシュガーをひと粒ずつ落としながら辿っていく。

本作の特徴は、「言わなかった」ことの重みを丁寧に描いている点にあります。劇的な事件は何も起こりません。ただ、ありふれた日常の中で確かに育っていた感情と、それを伝えそびれた後悔だけが、コーヒーの湯気のように静かに立ちのぼります。

朗読する際は、抑えた語り口が効果的です。涙ぐむのではなく、もう泣き終わった後の人が、過去を懐かしむように語るトーン。穏やかで、少し乾いた声で読むと、行間の感情がより深く伝わります。

▶ 朗読のポイントを見る(朗読される方向け・クリックで展開)

① 語りのトーン

全体を通して「もう泣き終わった後の声」を意識してください。感情を込めすぎず、淡々と過去を振り返るような穏やかなトーンが効果的です。冒頭の「コーヒーシュガーを、ひと粒だけ落とした。」は、独白の入口として、囁くようにゆっくり読み始めると世界に引き込めます。

② 緩急のつけ方

「彼は、来ない。」のような短い一文では、前後にしっかり間を取ってください。逆に、思い出を語る場面はやや流れるように読むと、回想と現在のコントラストが生まれます。

③ 感情表現のコツ

クライマックスの「好きだったよ、と。」は、絶対に泣かないでください。むしろ少し微笑むような、柔らかい吐息混じりの声で。感情を抑えるほど、聞き手の胸に届きます。

④ ラストの処理

最後の一文は、息を吐くように静かに置いてください。読み終わった後、3秒ほど沈黙を残すと余韻が深まります。


── 台本本文 ──

コーヒーシュガーを、ひと粒だけ落とした。

カップの底に沈んでいく茶色の結晶を、わたしはぼんやりと見つめる。スプーンでかき混ぜれば、すぐに溶けて消えてしまう。三年間、毎週土曜日の午後三時。この席で、わたしはずっと同じことをしていた。

向かいの席は、空いている。

「シュガー、二粒だっけ。」

そう言って笑った彼の声を、まだ覚えている。大学のゼミで知り合って、なんとなく流れで一緒に通うようになったこの喫茶店。彼はいつも、わたしのコーヒーに勝手にシュガーを入れた。「甘い方が好きでしょ。」って。

違うのに。

本当は、苦いままで飲みたかった。でも、彼が入れてくれるシュガーが、なんだか嬉しくて、一度も「いらない」って言えなかった。三年間、ずっと。

窓の外を、雨が伝っていく。

先週、彼は結婚する、と言った。相手は、職場の人らしい。「報告が遅くなってごめん」って、頭を下げられた。わたしは笑って、「おめでとう」って言った。声が震えなかったのが、自分でも不思議だった。

「ありがとう。お前にだけは、ちゃんと言いたかったから。」

お前にだけは。

その言葉を、わたしは一晩中、布団の中で繰り返した。喜んでいいのか、悲しんでいいのか、わからなかった。ただ、彼の中でわたしが「特別」だったのか「特別じゃなかった」のか、もう確かめる方法はないのだと、それだけが、はっきりしていた。

カップを手に取る。

ひと口含むと、ほんのり甘い。自分で入れたシュガーは、彼の入れたシュガーとは違う味がした。当たり前だ。同じ砂糖なのに、おかしいな、と思う。

「言えばよかったのかな。」

誰もいない向かいの席に、つぶやいてみる。

好きでした、と。三年間、ずっと、好きでした、と。土曜日の午後が、わたしの一週間で一番大切な時間だった、と。あなたが入れてくれる甘いコーヒーが、本当は苦手だったけど、それでも嬉しかった、と。

言えなかった。

言わなかった、のではなく、言えなかった。彼の隣にいられる「友達」というポジションを、失うのが怖かったから。中途半端なまま、三年間、わたしはこの席に座り続けた。

残ったコーヒーを、飲み干す。

底に、溶けきらなかったシュガーがほんの少し沈んでいた。スプーンですくい上げて、口に運ぶ。じゃりっ、と音がして、舌の上で甘さが広がる。

泣いてもいい場面だと思った。でも、不思議と涙は出なかった。代わりに、ふっと笑みがこぼれた。

「好きだったよ、と。」

今さら、誰にも届かない言葉を、わたしは空っぽのカップに落とす。コーヒーシュガーをひと粒落とすみたいに、そっと。

店を出ると、雨は上がっていた。濡れた歩道に、夕方の光が反射している。来週からは、別の喫茶店を探そう、と思った。シュガーを、自分で選べる店を。

苦いままで飲める日が、いつか来るだろうか。

来なくてもいい。ただ、彼との土曜日が、わたしの中でちゃんと終わったのなら、それでいい。

傘を畳んで、わたしは歩き出した。

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