📖 この台本について
⏱ 読了時間:約3分(約920字)
👤 登場人物:女性1名(1人用)
🎭 ジャンル:感動・泣ける
🎙 用途:朗読配信・練習・ボイスサンプル
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作品について
祖母の四十九日を終えた主人公のもとへ、一枚のハガキが届きます。差出人は、すでにこの世にいないはずの祖母。生前、手紙を書くことが趣味だった祖母が遺した一通には、「桜が咲いたら、三色団子を一緒に食べましょう」という何気ない約束が綴られていました。喪失と再会のあわいで揺れる、ある春の午後のひとときを描いた物語です。
この作品の読みどころは、派手な出来事を描かず、日常の余白にそっと悲しみと愛情を溶け込ませている点にあります。祖母の筆跡、縁側の光、湯呑みの湯気──細やかな情景描写の積み重ねが、聞き手の中に少しずつ「自分だけの祖母像」を立ち上げていきます。
朗読の際は、感情を前面に出しすぎず、抑えた語りの中にふと滲む温度を大切にしてください。涙を堪えるような、けれど穏やかな声色が作品の核になります。
▶ 朗読のポイントを見る(朗読される方向け・クリックで展開)
① 語りのトーン
全体を通して、穏やかで少し掠れたような中低音の声で読むのが効果的です。悲しみを叫ぶのではなく、胸の奥に静かに沈めるようなイメージで。冒頭の「ハガキが一枚、ポストに入っていた。」は、淡々と、しかし何かを予感させるように読み始めてください。
② 緩急のつけ方
祖母の筆跡を見つける場面「丸っこい、あのひらがな。」では一呼吸置き、声をさらに落として囁くように。逆に縁側の回想シーンは、ほんの少し明るさを含ませると対比が生まれます。「おばあちゃん。」と呼びかける一文の前後には、たっぷりと間を取ってください。
③ 感情表現のコツ
クライマックスでハガキの文面を読む場面は、泣かないこと。むしろ涙を堪えているのが伝わる、かすかに震える息遣いを意識してください。感情を「見せる」のではなく、「漏れてしまう」ように演じると聞き手の胸に届きます。
④ ラストの処理
最後の「またね、と小さく呟いた。」は、抑えた声でゆっくりと。読み終えた後も3秒ほど沈黙を残し、余韻の中で作品を閉じてください。
── 台本本文 ──
四十九日が終わって、三日目の午後だった。
ハガキが一枚、ポストに入っていた。チラシの間に紛れて、危うく捨ててしまうところだった。引き抜いて、差出人の欄に目を落とした瞬間、指先が止まった。
丸っこい、あのひらがな。祖母の字だった。
消印は、祖母が亡くなる三日前の日付。きっと、入院する前に投函していたのだろう。郵便局の棚の奥で、誰にも気づかれないまま眠っていたのかもしれない。
玄関先に立ったまま、私はしばらく動けなかった。
部屋に戻り、湯を沸かして、祖母が好きだった緑茶を淹れた。湯呑みから立ちのぼる湯気が、西日の中でゆっくりと揺れる。テーブルの上に、ハガキをそっと置いた。読む勇気が、なかなか出なかった。
思い出すのは、いつも縁側だった。
祖母は手紙を書くのが好きな人で、老眼鏡を少しずらしながら、便箋に向かって何時間も過ごしていた。「ねえ、誰に書いてるの」と聞くと、「誰でもいいのよ」と笑った。「書いてる間、その人のことを思えるから」。そう言って、お茶をすすっていた。
深く息を吸って、ハガキを裏返した。
「元気ですか。おばあちゃんは元気です。桜が咲いたら、一緒にお団子を食べましょう。あなたの好きな、三色のやつね。」
たった、それだけだった。
でも、それだけで、十分だった。
桜は、もう咲いている。散り始めている。祖母が楽しみにしていた春は、祖母のいない春になってしまった。
私は、ハガキを胸に当てた。まだ、祖母の字の匂いがする気がした。正確には、祖母の家にあった古い本棚と、線香と、お茶の葉の混ざった、あの匂い。
涙は、意外と出てこなかった。ただ、胸の奥が、あたたかくて、少しだけ痛かった。
「おばあちゃん。」
呼びかけてみる。返事は、もちろんない。けれど、西日の差す部屋の中で、湯呑みの湯気がふっと揺れた。それだけで、私には十分な気がした。
明日、桜の下で三色団子を買って帰ろう。仏壇に供えて、祖母の分まで、ゆっくり食べよう。そして来年も、再来年も、桜の季節にはきっと、このハガキをもう一度読み返すのだと思う。
またね、と小さく呟いた。
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